四面楚歌-悲運の妃-
護衛へと向かう崙矣を送り届け終わると、入れ替わるように李燗が室へ訪れた。
舞妃ノ宮で鍛練した後に一度室に帰って着替えたのか、髪は結い直され衣装も裾を引きずる華美なものになっていた。
これが普段の李燗であり、舞妃ノ宮での李燗の姿が珍しいのだが、その差に思わず笑みがこぼれる。
「難しい顔をしてると思ったら、私の顔を見て笑うなんて失礼ね!」
頬を膨らませる李燗は、舞妃ノ宮で軍妃に啖呵を切った者とは思えぬ程可愛らしい。
私達と肩を並べたいと言う李燗の気持ちは嬉しいが、妃として過ごして幸せになって欲しいと思わずにはいられない。
それは柳将達が今夜から加わる事に、まだ少なからず不安や迷いがあるから余計に思ってしまうのかもしれない。
「今日は姜賢妃様が黄麟殿に渡られるのね。
冥紗は皇后様の護衛?」
室に入り椅子に腰掛ける早々に李燗は言ってきた。
『その事なのだが…』
先を言うのをためらっていると、威仔がお茶を持ってきた。
お茶を一口飲み一息つくと、急かすように身を乗りだす李燗に、先程の事を話した。