四面楚歌-悲運の妃-
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「姜賢妃様のお渡りでございます。」
陛下が黄麟殿にお入りになって、数刻。
陛下とはお渡りの際には、一言も交わす事はなかった。
ただ、悲しい顔をしてこちらを見ていた。
今黄麟殿入り口には宦官3人と私の4人。
壁内侍はさき程到着した姜賢妃を連れて来た。
私は深く頭を下げる。
「そなたが琴軍妃将軍か?」
前を何もなく通り過ぎるかと思った姜賢妃が、私の前で立ち止まり言った。
『はい。今日の警護を任されました。軍妃将軍・琴冥紗でございます。』
頭を下げたままそう返すと、綺麗な衣装の袖と細く綺麗な指が私の頬に触れる。
「良い。頭をあげなされ。」
ゆっくりと頭を上げると、姜賢妃の姿が瞳に映し出される。
豪華な衣装、綺麗に結い上げられた黒髪に、豪華な髪飾りがいくつも付けられた、美しい人。
この方が姜賢妃…。
「軍妃とて同じ妃。頭を下げるは皇后様のみ。…今日はお頼み申します。」
私の仮面の姿に一度目を細めると、そう言って黄麟殿へと入って行った。
少しキツイ感じだけれど優しそうな方…。
貴族出身だけあって、貴賓が溢れている。