さまよう爪
「……小野田さん、好き」

愛流が目の前で頬杖をつき、じっとこちらを見つめていた。くりくりした愛らしい目。薄く塗られたファンデーション。誰もが好きそうな淡い色の口紅。こんな可愛らしい顔で「好き」と言われたら、どんな男もころりと落ちてしまうのではないか。

たとえ、おでこが赤くても。

同性のわたしでさえちょっとドキっとくる。

「ありがとう。わたしも三澤さん好きだよ」

「あーもう、小野田さんと結婚するぅー」

「ちょっとなに、言っちゃってんの」

さすがに肝が冷える。

それはダメでしょと軽くたしなめるわたしに愛流は言う。

「小野田さん、パセラ行きましょうよー、ハニトー食べましょー。金曜日の夜は甘いもの解禁です。ハニトーが3つならんだハニトートレイン制覇しましょう!」

「ごめん今夜は無理なんだ。先約があって」

「えーそうなんですかぁ? あ、もしかして。いいですよねぇ仕事を頑張るモチベーションになるし。雰囲気いつもと違うなぁって思ってました」
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