さまよう爪
「ねえ小野田すみれさん」

「はい」

「俺、ひみつはあるけど訊かれたことはちゃんと応えますよ」

またおかしなことを言う。

「さっき女の人たちと何話してたんですか」

「デカいピアスしてたから、重くないのー、そんなにデカいとどっかに引っかかったことあるでしょ? って話ししてた」

「ふうん」

「続きはメシ食って話そう。腹がへって死にそうだ」

「じゃあ今日はご馳走させてください。ずっと瀬古さんに面倒かけてばかりだったし」

瀬古さんはわたしの申し出に、そう? では有りがたく。とあっさりのってくれた。

よかった。

これでようやく彼に恩が返せるから。

「いい店がこの先にあるんだ」

と瀬古さんの案内で夜の街を歩く。
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