さまよう爪
「辛いのは平気?」

「激辛はダメだけど旨辛は大丈夫です。あ、あとタコわさは少し、苦手」

「じゃあ大丈夫かな」

という会話を移動中にしながら、瀬古さんに案内されたのはインド料理の店だった。

煌々と明るいスタンドタイプの電飾看板には「本場のインド料理をご賞味ください。たくさんのスパイスを使った料理です。インド料理」という文字の下にたくさんの料理があり、「単品料理300円から ランチタイム Aセット Bセット」とアピールする。

ランチタイム以外でインド料理を食べるのは初めてだ。

外から見るとガラスに光が反射して見づらいが大きなガラス窓には、インド料理店によくある象の図柄のタペストリーが貼ってある。

独特な青紫色の壁が特徴の店内。カウンター席とテーブル席が5卓あり20ちょっと人いれば満杯になってしまうような店だった。

2人組の女性とスーツ姿の男性が1人。

すでに料理を食べている。

クミンの香りが漂い、エキゾチックな照明や布に飾られた異空間。

テレビはインド映画がやっていて踊り狂う美女。

後ろには数十人の男を従えて。

男も踊る。

壁に飾ってあるタージマハルの絵。

幸運を呼ぶインドの神様ガネーシャ像。

レジ横にあるカラフルな種。口直し用のスースーするスパイスはどこも同じようだ。
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