さまよう爪
誰かの気配に気づいて横を見る。
「イラシャイマセー!」
心臓がはねた。
いつのまにか、テーブル横にあの口ひげの店員が立っていたからだ。
「アー、オキャクサマ、フタリ、ゴアンナイ」と今更言われると、テーブルに2つのコップを置いていく。
浮き彫りになった唐草模様のアルミコップには水がなみなみと注がれている。
そしてあっという間に隣の席の食器を片付けてしまう。一度厨房へ行ったかと思えばすぐにこちらへ戻ってきた。
「ゴチュモンナニニシマスカ? カラサハ? フツノナンデイイ?」
こちらを大きな目で見下ろして、早く注文しろの構え。ぴくりともしない長い睫毛。
「えっと、」
メニューを見る。「バターチキンカレー」が「バータチキンカレー」になっている。なかなか決められない。時間だけが過ぎていく。
店員の視線を感じる。
ガン見されてるきっと。
焦る。
何となく怖くてうろたえていると瀬古さんがもう一枚あるメニューを指差し、トントンする音にわたしは顔をあげる。
「イラシャイマセー!」
心臓がはねた。
いつのまにか、テーブル横にあの口ひげの店員が立っていたからだ。
「アー、オキャクサマ、フタリ、ゴアンナイ」と今更言われると、テーブルに2つのコップを置いていく。
浮き彫りになった唐草模様のアルミコップには水がなみなみと注がれている。
そしてあっという間に隣の席の食器を片付けてしまう。一度厨房へ行ったかと思えばすぐにこちらへ戻ってきた。
「ゴチュモンナニニシマスカ? カラサハ? フツノナンデイイ?」
こちらを大きな目で見下ろして、早く注文しろの構え。ぴくりともしない長い睫毛。
「えっと、」
メニューを見る。「バターチキンカレー」が「バータチキンカレー」になっている。なかなか決められない。時間だけが過ぎていく。
店員の視線を感じる。
ガン見されてるきっと。
焦る。
何となく怖くてうろたえていると瀬古さんがもう一枚あるメニューを指差し、トントンする音にわたしは顔をあげる。