さまよう爪
それがいつものやり口ってわけだ。わざとらしくて見え見えすぎ。

最後の言葉を意味深に感じてしまいながら、彼の瞳はわたしを捕らえて離さない。

昔。大学生。

「瀬古さんって今おいくつなんですか?」

「いくつに見える?」

こういうノリは正直、面倒くさい。

「言ってなかった? 32」

さんじゅうに。

「……若く見えますね」

7つも上。

意外といってる。

肌にハリとつやがあって、悪い意味ではなく目鼻立ちが比較的地味めで歯並びが綺麗。だから頬の内側から張っていて、太っても痩せてもいない体型だからそう見えるのかもしれない。

「そうでもないよ。20代の子と並んだら確実に痛いって」

じゃあわたしと並んだらそうなのだろうか。

同性と異性では違うかもしれないが。

年齢聞いといて自分の年齢を答えないのはどうかと思うので言う。

「わたしは25です」

「へぇ、そうなんだ」

そもそもいざ自分の歳を言わない人が多いのは何故だろう。

僕は永遠の18歳と言っているセクハラモラハラパワハラ最悪最低トリプルコンボの中年上司がいるが、はっ倒したくなる。

よく知らない相手に関するイメージを形成していく為に、年齢を尋ねるわけで。

しかし、人の特徴は、年齢というアバウトなもので決まるものでない。

一般的な年齢観で個性を判断され、先入観を持たれることを望む人はどれほどいるのだろうか。

大抵の人は、年齢というもので先入観を持たれたくないはず。

もし、自身が年齢で他人を判断する人ならば、相手も同じだと、自分が年齢で判断されることに警戒するだろう。

自分自身の年齢に対して、多かれ少なかれネガティブなイメージを持っているのかもしれない。

昔は女性をクリスマスケーキ扱いして、冷やかしでクリスマスイブのケーキ、と、結婚を焦らしていたが、今はそうでもないけれど。

わたしも、年齢でレッテルを貼られなくない。
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