強引専務の身代わりフィアンセ
 エキスポは国際試合なども行われるアリーナをメイン会場に、周辺の施設一帯とも連携して行われる。駅からの人の波も開催期間中は大変なことになるらしい。

 そんな中、私たちは専用に設けられた屋内駐車場に車を停めて、受付に向かうことになった。

 アラータの社長の意向なのか、アリーナを中心にまるでカーニバルに来たかのような盛り上がりで歓迎を受けた。

 カラフルなフラッグ、期間中のみの広告看板が並び、人々の注目を浴びている。この土日だけ一般ブースも設けられるので人の賑わいもすごい。

「お祭りみたいですね」

「ある意味、お祭りだからな」

 感銘を受ける私とは逆に、専務はあくまでも冷静だ。今日は初日ということもあり、まずは開幕式に参加することになっている。

 関係者のみの参加なので、自然と周りは、それなりの格好をしている紳士淑女が多かった。ここは日本なのに、イベントがイベントだから外国人の方が多い気がする。

 受付でエキスポへのゲスト証を受け取り、足を進めながらも、胸の中では仕事に対する緊張と国際見本市へ参加することへの期待が入り混じる。

 ゲスト証には「鈴木美和」とフルネームが記載されているが、ここにいるのは私ではない。あくまでも専務の婚約者としての鈴木美弥さんの代理なのだ。その考えが引き金になり、私の心の中は一瞬にして不安に覆われた。

 今ここにいる人たちは、世界的に有名な会社の偉い手や経営者たちで、そして専務もそちら側の人間だ。現に彼のスーツも高級なものだと一目でわかる。

 どこのブランドかまでは認識できないが、上質な素材は光沢を放ち、落ち着いたダークトーンは彼の良さを引き立てている。

 きっちりと着こなして姿勢よく歩く姿は、背が高く、映画に出てきそうな美形な外国人たちの中でも引けを取らない。

 ……でも私は?
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