紳士的上司は愛を紡ぐ
「大丈夫なわけないでしょう?」
まだ裏だから、間に合う。責めている訳ではないが、表には大勢の観覧者もいるし、カメラの前で倒れられる方が大変だ。
「島崎、一旦休め。後半、回復したら出ていいから。スタッフは救護頼んだ。
……二宮、島崎の分も曲紹介いけるな?
曲終わりまで残り1分、至急スタンバイで。」
駆けつけた遠藤さんが的確な指示を出す。
「はい、いけます。」
涼子から原稿を預かり、スタンバイへ向かう。
大丈夫。リハーサルでも、隣で何度も聞いてきた。こんな所で、私が失敗させる訳にはいかない。
気を引き締めて、彼女の読むはずだった曲紹介を1つひとつこなしていく。