紳士的上司は愛を紡ぐ
彼女が倒れたのは、放送から1時間経った丁度折り返し地点。もし、放送中に回復しなければ、残り半分を私が務めなければならない。
"不安"の文字が脳内を霞める。
ここで私が弱気になってどうする。
そう思いながらも、突然倍に増えた出演に戸惑い、原稿を持つ手は頼りなく震えていた。
───いけない、と握り直した時。
「島崎アナの原稿はそれですか?」
と、優しい声が頭上に響いた。
顔を上げると同時に、手から彼女の分の原稿がするりと抜かれる。