紳士的上司は愛を紡ぐ
「…………っ八王子アナ、?」
驚きの余り、上手く声が出ない。
「確か、ちょうど収録終わってるんじゃないかと思って、隣のスタジオから引っ張り出してきた!」
ドヤ顔の遠藤さんが、彼の背後からひょこっと顔を出す。
「遠藤さんにはお世話になってますから。」
と彼は微笑みながら、パラパラと原稿を確認していた。
「彼女の分は、私が引き受けます。
だから、二宮アナは落ち着いて、今まで通りで大丈夫です。」
呆然としている私に、そう告げる。
いつかのようにポンポンと頭を撫でると、彼は颯爽とスタンバイへ向かった。
その後ろ姿に思わず見惚れる。
安心したにも関わらず、鼓動は別の意味で高鳴り始めていた。