紳士的上司は愛を紡ぐ
「皆さん、こんばんは。
EBSアナウンサーの八王子 透です。」
彼のサプライズ登場に、客席からは黄色い悲鳴と"プリンス〜!"という歓声が巻き起こる。
「私もこの『EVE FES』が大好きで、
今日はちょっとお邪魔してしまいました。
この後もどうぞお楽しみ下さい。」
なんてアドリブを加えながら、
つい5分程前に初めて目にした原稿を、すらすらと読んでいく。
動じない彼の完璧なアナウンスを久しぶりに聞いて、耳から全身に熱が伝わる。
しかし、そんな場合じゃなかった。
私も、自分の担当に集中しなくては。
もう何曲目か分からない、自身の曲紹介を終えて裏へ下がると、足音を抑えながら涼子が小走りに戻ってきた。