リボンと王子様
ガチャガチャ……。
シンと静まり返った室内に音が響いた。
扉が開く。
その音に、急いで玄関に走った。
「お、お帰りなさいませ」
緊張で小さくなった声を隠すように頭を下げた。
「……は?
何で?」
少し疲れた様子の雇用主は瞠目して私を見つめた。
表情以外は、丸一日仕事をこなしてきた人とは思えない程、黒に近い紺色のスーツは乱れていなかった。
「あ、あの……お仕事でお疲れのところ、大変申し訳ないのですが……お話したいことがございまして……響様に連絡がつかなかったものですから……」
おずおずと私が告げると。
「え?
あー……ごめん。
葛さんのスマホ、会社の引き出しに入れっぱなし」
端正な顔立ちをしかめて、千歳さんは目を手で覆った。
「ってか、もう今、十時前くらいだろ?
まさか葛さん、ずっとここにいた?」
コクン、と小さく私が頷くと。
「マジ……ごめん」
ハーッと大きな息を吐いて、千歳さんは黒の磨きこまれた靴を脱いだ。
「何か食べた?」
リビングに向かいながら、彼は後ろにいる私を振り返って話しかけた。
「あ、いえ……私は、それより響様は?」
「俺はいいから、何か飯食いに行こ」
踵を返して玄関に向かう千歳さんの腕をガシッと反射的に掴んだ。
「ご、ご飯よりもお話したいことがありまして……!」
ギュッと目を瞑って話す私に。
千歳さんは立ち止まった。
シンと静まり返った室内に音が響いた。
扉が開く。
その音に、急いで玄関に走った。
「お、お帰りなさいませ」
緊張で小さくなった声を隠すように頭を下げた。
「……は?
何で?」
少し疲れた様子の雇用主は瞠目して私を見つめた。
表情以外は、丸一日仕事をこなしてきた人とは思えない程、黒に近い紺色のスーツは乱れていなかった。
「あ、あの……お仕事でお疲れのところ、大変申し訳ないのですが……お話したいことがございまして……響様に連絡がつかなかったものですから……」
おずおずと私が告げると。
「え?
あー……ごめん。
葛さんのスマホ、会社の引き出しに入れっぱなし」
端正な顔立ちをしかめて、千歳さんは目を手で覆った。
「ってか、もう今、十時前くらいだろ?
まさか葛さん、ずっとここにいた?」
コクン、と小さく私が頷くと。
「マジ……ごめん」
ハーッと大きな息を吐いて、千歳さんは黒の磨きこまれた靴を脱いだ。
「何か食べた?」
リビングに向かいながら、彼は後ろにいる私を振り返って話しかけた。
「あ、いえ……私は、それより響様は?」
「俺はいいから、何か飯食いに行こ」
踵を返して玄関に向かう千歳さんの腕をガシッと反射的に掴んだ。
「ご、ご飯よりもお話したいことがありまして……!」
ギュッと目を瞑って話す私に。
千歳さんは立ち止まった。