リボンと王子様
千歳さんは現在は響株式会社には勤めていないけれど。

国内でも有数の大企業である、響株式会社の、響家の長男で跡取り息子だ。



かくいう私はいわゆる一般的な家庭に育った普通の女子だ。



いくら親戚に公恵叔母さんのような大企業の社長がいるとはいっても、私は株主でも経営に携わっているわけでめたなく、直接かかわり合いがない。

勿論公恵叔母さんのことも瑞希くんのことも、樹くんのことも大好きだし大切な存在だ。



ただ、私の家柄や地位といったものを問われた時に須崎家と私には何の関係もないのだ。

むしろ繋がりを求める方がおこがましく思えるくらいに。



私は私の両親も舞花も大好きで大切で。

葛城穂花として生きてきた人生に何の悔いも不満もない。



だけど。



何処かのご令嬢でもない私は。

千歳さんの隣りに並び立つことはできない。



有子おばさまが私に依頼したこと。

『千歳さんの女性関係』を調べること。

それは千歳さんには千歳さんに似合う女性を捜すためで。

その依頼が皮肉にも私を千歳さんと再会させてしまうなんて。



運命は何処までも残酷だ。

夢見ることすら叶わないなら、何のために私は千歳さんと再会したのだろう。

……こんな未来なら再会なんてしたくなかった。


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