友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
翌朝。
琢磨は梯子を登る。
そして、口を開けて眠るのぞみの鼻を、ぎゅーっとつまんだ。
「んっ?」
のぞみが驚いて目を開いた。頭はボサボサ、ぼけっとした顔だ。
「朝だ。布団干すから起きろ」
「……何時?」
「八時」
のぞみは「はやっ」と言うと、ばさっと布団を再びかぶる。
「休みだから、まだ寝たいー」
「週末しか干せないんだから、起きろって」
琢磨は布団を引っ張ったが、のぞみの抵抗はすごい。しびれをきらして、布団に手を突っ込んでくすぐり攻撃をかける。
「ばっ、やめろ。やめてー」
ロフトの上でドタバタと暴れる。
「起きろって。やることたくさんあるんだから!」
琢磨は強引に布団を引き剥がして、無理やりのぞみを起こした。
ぶつぶつ言いながらロフトから降りてきたのぞみのスゥエットは、片方の裾が上がり、肩がずり下がっている。
「飯くったら、掃除するぞ」
ぼんやりしているのぞみに、琢磨は鍋のタッパを手渡した。
「あーコレ」
のぞみが頭を掻く。
「俺、仕事たいてい深夜だから、夕飯いらねーよ」
ロフトの布団をくるっと丸めて持つと、バルコニーにいく。
ガラス戸を開けると、冬の始まりを感じる冷えた空気が、ピリピリした。
「そうなの? まあ、なんていうか、わたしの分だけ作るのもどうかと思って、さ」
のぞみはばつが悪いというように、タッパを片手に顔を上げない。
「家で飯食える時は、連絡するから」
琢磨は言った。
「……そう?」
のぞみが顔を上げる。
「でも、俺が作るから、お前の鍋は禁止」
「なんでよっ」
のぞみはダイニングテーブルにタッパを置くと、一緒にバルコニーに出てきた。
「鍋の素で野菜を煮ただけだろ? それ、料理じゃねーから」
「立派な料理だし」
二人で布団の両端を持って、物干し竿に布団を干す。
「鍋なら、だしからとる」
琢磨がそういうと、のぞみが「うわー、めんどくさい男」と眉をひそめた。
「でもうまいから。今度作るから食べて」
琢磨はそののぞみの渋い顔を見て笑った。
「いいよ、じゃあ鍋の素とどっちがおいしいか、ジャッジするから」
のぞみもつられて笑った。