友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
琢磨と一緒に出かけた。
エレベーターに乗ると、お腹がぐうとなる。
「ほんと、色気がないなあ」
薄手のグレーのコートを着た琢磨が笑った。
「煮た野菜は、消化がいいのよね」
ダウンコートにデニムを着たのぞみが答えた。
「ランチ、どこ食べに行くんだ?」
「おいでおいで」
のぞみは琢磨の袖を引っ張っる。
琢磨は素直にのぞみについてきた。
琢磨は昔から真面目だった。勉強にも、それから遊びにも真面目。だから今、こんな風にしっかりした暮らしをしてるのだろう。
のぞみは横を見上げた。
琢磨の頬が冷たい風に乾燥して、ちょっとこわばっているのが見える。
高校生の時よりも、おそらくいい男になった。それは確かだけれど、のぞみはどこかしっくりきてない。
大人の琢磨をみるたびに、昔のみんなを巻き込むみたいに大きく笑う、その笑顔と比べてしまう。
時間が経ったっていうことなのだろうか。
「ココ」
「コンビニじゃん」
琢磨が呆れた顔をする。
その顔もなんだかおかしい。のぞみはなんでもかっちりしてる琢磨を崩すのが、どうやら好きだ。
二人でパンとジュースを買って、また歩く。
しばらく行くと、川沿いの遊歩道に出た。土手らしきものはあるが、コンクリートで固められていて、芝は生えてない。
のぞみがその土手に座ると、隣に琢磨も座る。
天気は上々。
真っ黒な川面に、太陽がキラキラと反射していた。