元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

私たちが一時的に身を寄せた島の名前はセンナと言う。

一応所有権はアルバトゥスのものになっているけど、海軍が使用するための設備はできていない。港を占領してしまった帝国艦隊を、地元漁師たちは迷惑そうに見つめていた。

「完全アウェーですね」

「仕方ないさ」

一夜明け、傷ついた艦体を修理する。本来現地の船職人の手を借りたいところだけど、島には軍艦を修理できる技術を持った職人はいないとのこと。

「命をかけて戦っても、こんな扱いかよ」

釘を口に加えて金づちを持ったライナーさんがもごもごとぼやく。意外と似合ってるけど、言わずにおこうか。

「ここは何度も所有者が変わっているからな。エカベト領だったこともある。戦争が起きるたびに巻き込まれていい迷惑だと思っているだろうよ」

「本国から遠く離れて、しがらみも少ないが恩恵もほとんど受けていない。この島の人々が自分の暮らしを軍隊に乱されたくないと思うのは当然だろ」

レオンハルト様と近くで塗装剤とハケを持ったアドルフさんに交互に言われ、ライナーさんは諦めたように作業に没頭し始めた。

こういった作業も、下士官から上級大将、果ては元帥まで参加するのがヴェルナー艦隊独特の習わしだそう。

ベルツ参謀は破壊された大砲を新しいものに入れ替える作業の指揮を執っていた。大砲はあとからきた補給艦が運んできたもの。

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