元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
昨夜、あとからやってきたアルバトゥス艦隊のメイヤー提督がレオンハルト様と私たち幹部が泊まる宿屋にやってきた。
『すぐに出発し、このままの勢いでエカベトを陥落させましょう。勝利は目の前です!』
上級大将の階級章を揺らしながら、レオンハルト様を鼓舞しようとしたチョビ髭のメイヤー提督だったけど……。
『うちの艦隊は敵主力艦隊と交戦し、多くの損害を被った。兵士たちの休息とじゅうぶんな補給が何より重要だと考える。主力艦隊を壊滅させられた相手の降伏宣言を待っても良かろう』
レオンハルト様は出陣しようとしない。眠気で重くなったまぶたが、メイヤー提督をにらんでいるように見えた。
『そんな悠長な。私の他にもこちらにアルバトゥス海軍が集結しつつあります。是非、ヴェルナー元帥閣下のお力を……』
『では、集結するまで待つ。この島は狭すぎるから、モンテルカストに戻ろう。そこから艦体編成を整えて……』
戦いたくてうずうずしているようなメイヤー提督は地団駄を踏んだ。大人になって地団駄を踏んでる人、初めて見た。
『たかが三割の損害を出しただけで怖気づいたのですか、元帥閣下!』
わめくようなメイヤー提督の声が、その場の空気を凍りつかせた。ライナーさんとアドルフさんが視線を交わす。ベルツ参謀はじっとメイヤー提督を見つめた。