元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
そして、レオンハルト様が立ち上がった。アンバーの瞳が燃えるようにギラリと光る。
『”たかが”三割だと』
怒気を孕んだ声が、幹部たちの眠気を追い払う。メイヤー提督は恐れおののいた顔で口をつぐんだ。
『お前にとって”たかが三割の損害”でもな、沈められた船には兵士が乗ってたんだ。皆誰かの子だ。あるいは誰かの父かも、恋人かもしれない。それをたかがとは何事か』
『いや、あの……』
『俺の任務は、ひとりでも多くの兵士を国に返すことだと思っている。無謀な出陣はできない。やりたければお前さんたちで勝手にやってくれ。勲章も武勲も、俺にはこれ以上必要ない』
決然とした声でぴしゃりと言い放ったレオンハルト様は、メイヤー提督の反論を待たずに背中を向け、憮然とした態度で部屋を出ていってしまった。
『あの……あなたたちで元帥閣下を説得してくれませんか。敵軍の士気が著しく低下している今が好機です。こちらが態勢を立て直すうちに、敵も立ち直ってしまう』
おろおろしながらも、私たち幹部を説得しようとするメイヤー提督。
『無理だな』
『無理ですね』
ライナーさんとアドルフさんがバッサリとメイヤー提督の懇願を断ち切る。