元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

自分でできないなら解かなきゃいいのに……。

皇帝陛下直筆の書状を雑に扱うヴェルナー一味を、他の提督たちは眉間にシワを寄せて見ていた。

「エカベトに届けるのはもちろんですが、どうしても交戦は避けられません」

四〇代の金髪の提督が言う。それを聞いたレオンハルト様は不敵に笑った。

「交戦の途中で誰かが戦火をかいくぐって国王に会い、降伏をすすめればいい」

「はあ? まさかそれを誰かにやれって言うんじゃないだろうな」

黙っていたライナーさんが口を挟んだ。

海からは味方艦隊の砲撃、陸からは敵の陸軍の攻撃……おそらく地上からの射撃と城塞からの砲撃。その間を通って国王に面会を申し込むなんて、無謀極まりない。

「まあ安心しろ。俺は自分だけ安全な場所に隠れていようとは思わない」

レオンハルト様が腕組みをしたまま、ハッキリとそう言う。七人の提督とヴェルナー艦隊幹部が一斉に黒髪の元帥閣下を凝視した。

まさか、この人……。

「俺が行く」

やっぱり! 自分が行く気だった!

「ダメです! いくら不敗の軍神と謳われようと、そんなことしたら絶対死にますよ!」

周りの目を気にせず、レオンハルト様の前のテーブルをドンと叩いた。けれどレオンハルト様は眉ひとつ動かさない。

< 133 / 210 >

この作品をシェア

pagetop