元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「じゃあ、代わりに行きたい者はいるか? ここで功績をあげれば昇進間違いなしだが」
ぐるりと見回され、提督たちは全員アンバーの瞳と視線が合わないようにそっぽを向く。
「なんて情けない! いいです、私が行きます!」
手を挙げると、レオンハルト様が私を見て低い声で言った。
「お前はダメ。見た目でなめられるし、どんくさいから。この前も撃たれたばかりだし」
言葉の砲撃が胸を貫く。
ううっ、人が気にしていることをアッサリと……!
「なあ元帥閣下よ。悪いことは言わない。普通に戦って勝って、降伏させるのはそれからでいいじゃないか」
ライナーさんがため息交じりにレオンハルト様を説得する。
「そうだな……うん、わかった。ひとまずそうしよう。戦いが長引きそうだったら、そのとき誰が上陸するかくじ引きで決めることにする。提督全員の名前を書いたくじを用意しておこう」
うなずいたレオンハルト様が意地悪を言うので、広間が一瞬ざわついた。
けれど、すぐに静かになる。レオンハルト様に死なれたら困るのはここにいる全員だし、とにかく早く戦闘に勝てばいい。交戦になる前に相手が降伏してくる可能性もゼロではない。
私たちはそれぞれの希望的観測のもと、レオンハルト様の決定を飲むことになった。