元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
センナ島の人たちにお礼を言い、私たちは再び海に出た。
今回のレオンハルト様の仕事は一層大変だ。直属の艦隊だけじゃなく、七人の提督が率いる帝国艦隊全体を指揮しなければならない。
無理しないでください、なんて言ったところで意味はない。無理をするに決まっているのだから、私はその補佐役を務めあげるだけ。
それにしてもレオンハルト様、本当に自分が交戦真っただ中の敵地に上陸するつもりなのかな。そういう事態にならなければいいけど。
戦争は辛い。味方が殺され、敵を殺す。ただそれだけのことだ。敵に勝った時に得られるのは安堵感だけで、幸福でも充実感でもないことを身を持って知った。
私は軍人に向かないみたい。後方勤務に徹していたらきっと、ずっとわからなかった。
甲板の上、相変わらず船首に立って海を見つめるレオンハルト様の横顔を見つめる。
無事に帰れたら、本当にこの人の花嫁になれるんだろうか。
「……どうした?」
不意にレオンハルト様がこちらを向くから、どきりと心臓が小さく跳ねた。
「い、いえ」
「緊張してるのか」
「ええまあ。これで最後の戦いになればいいなと、そんなことを考えていて……」