元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
慌てて目を閉じた途端に、レオンハルト様が離れていく。あまりに短い口づけにぱちぱちと瞬きすると、彼は額を私の額にこつんとつけて言った。
「すぐに迎えに行けなくてすまない。余裕があればこのまま押し倒したいくらいだが、先に話しておかなければならないことがある」
「エカベト国王のことですか」
質問すると、レオンハルト様がこくりとうなずく。
「牢に幽閉されているというのは真実なのですか?」
「ああ、あれから国王に面会を申し込んでも一向に受理されない。皇居の地下に連行されていったという密告もある」
皇帝の住む宮殿とは、その前の広場から後ろにある広大な庭園と後宮もふくむ。皇居というのはその中心にある、皇帝が寝起きする建物のことだ。
レオンハルト様と出会った式典を催す建物とはまた別の建物で、どうしてこれほどの部屋数が必要なのかと思うほど大きいという。
「それが本当であれば、今後どうするおつもりで?」
「国王を見つけて解放し、エカベトに返す。けれどそれを強行するのは無謀だ。皇帝陛下を説得するしかない」
皇帝陛下を説得か。周りの貴族たちの言いなりになっていた皇帝陛下だけど、今はレオンハルト様への信頼も篤いらしい。素直に耳を傾けてくれるといいけど……。