元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「まさか……つい最近までお元気だったではないか。いやそれより、お前はどこでそれを知ったんだ?」

レオンハルト様に問われ、少年はちらりと玄関の方に視線をやった。そのとき。

「レオンハルト・ヴェルナー元帥! ここを開けられよ!」

玄関の扉が、不躾な訪問者によってドンドンと悲鳴を上げた。

気づけば、玄関の外に大勢の人の気配がする。少年は訪問者から皇帝陛下が崩御それたことを聞いたのかも。

だとすると、どうして逃げるように中に入ってきたのか。

「……お前は隠れていろ」

そう指示するレオンハルト様。皇帝陛下の死を知らせに来た使者にしては騒がしい。すでにある沈黙と緊張が不穏な空気でデコレーションされていく。

「いいえ、お傍にいます」

彼のシャツのすそをつかんだ途端、ドアが大きく膨らんだ。そのように見えたのは、外側から大勢の人間でドアを押したからだろう。

「そこから離れろ!」

一生懸命ドアを押さえようとしている少年を手招きする。彼がこちらに駆け寄ってきた途端、バキバキと木の裂ける音がしてドアが蝶番ごと吹き飛んだ。そこから憲兵隊の制服を着た男たちがなだれ込んでくる。

銃を持った憲兵隊は、あっという間に私たちを包囲した。いったいどうして、憲兵隊がレオンハルト様の家に? これじゃ彼が罪人みたいじゃない。

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