元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

この国では、権力を持った者がこじつけた理由で誰かを罪人に仕立て上げることなど、赤子の手をひねるより容易い。

「皇帝陛下はどうやって殺害されたのですか。レオンハルト様を連行するというのなら、せめてそれくらい聞かせてください」

彼の前に出て両手を広げる私を、メイヤー提督はうざったそうに眺めた。

「元帥閣下とあなたが一番よくご存知でしょう。皇帝陛下はご自身の寝室で、毒を注射されたのです」

「え……」

「皇帝陛下が倒れられたのは二日前。その夜、ある女性が皇帝陛下の寝室から出てくるのが目撃されました」

ある女性? 首を傾げる私に、メイヤー提督の人差し指が突き出される。

「亜麻色の髪をした、やせ形の美しい女性だったそうです。それはあなたですね、ルカ・クローゼ中佐」

「は?」

たしかに特徴は一致……美しいという点は無視して……しているとしても、それは私じゃない。皇帝陛下のお傍に近寄ったことなんてないんだから。

「あなたは許可なく皇居に侵入し、その美貌を武器に人知れず皇帝陛下に近づいた。そして毒を注射したあと、走って逃げた」

「ちょ、ちょっと待って。よくもそんなデタラメ推理を堂々と発表してくれるな」

< 180 / 210 >

この作品をシェア

pagetop