元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
私がどうして皇帝陛下を殺さなければならないの。
崇拝してもいないけど、個人的な恨みも政治的陰謀も持ち合わせていないのに。
「そう言いきる証拠は?」
再び証拠を求めるレオンハルト様。だんだんと険しい表情になる彼に、メイヤー提督は淡々と言い放つ。
「あなたの船の物品を調べさせてもらいましたよ、ヴェルナー元帥。薬品庫から、麻薬が帳簿上の数より少なくなっていた」
「麻薬か。使い方では毒にもなるな」
「そういうことです。そして、その薬品の在庫管理をしていたのは」
メイヤー提督とレオンハルト様が同時に私に視線を投げる。
たしかに、薬品の在庫管理をしていたのは私だ。特に麻薬は勝手に持ち出されては危険なため、毎日欠かさず在庫数を調べていたはず。鍵も私が管理していた。
帰還してすぐ陸軍に戻ってしまったため、航海後のことはわからない。けれど、それだけでも私が麻薬を盗んだと疑う材料は十分だろう。
「で、お前は俺がルカに命じて皇帝を殺害させた黒幕だと信じて、逮捕に踏み切ったわけだな」
「そういうことです。そしてクローゼ中佐には他の疑いもかけられています」
まだ何かあるの? じっとにらむと、メイヤー提督は私をにらみ返してきた。
「中佐が実は女性だという情報がとある筋から寄せられました。それが本当であれば、皇帝陛下の兵でありながら、陛下を欺いていたという罪に問われます」