元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
私とレオンハルト様は反論する声を失った。
父上が恐れていたことが起きてしまった。女人禁制の帝国軍に男装して紛れていたのだから、処罰は免れない。けれどいったいどこから、私が女だということがバレたのか?
「私は皇帝陛下を殺害なんてしていません」
かろうじてそう言うと、メイヤー提督は一歩進み出て私のあごをとらえて上を向かせた。
「では、潔白を証明するため、ここで服を脱いでみよ」
「何を……」
「嫌なら、私が脱がせてやっても構わんのだぞ」
下卑た視線で私を見下ろすメイヤー提督。その手は、横からより大きな手に打ち払われた。
「汚い手でこいつに触るな」
私を抱き寄せるレオンハルト様。その声には純粋な怒りがみなぎっていた。
「こいつは俺のものだ。他の男が触れることは許さない」
レオンハルト様が一歩踏み出すと、メイヤー提督は怯えたような表情で一歩引いた。
武器を持っていなくても体中から湯気のように立ち昇る怒気が、憲兵隊たちをも怯ませる。
「よかろう、連行されてやる。その代わり、こいつには指一本触れるな」
「そうはいきません。クローゼ中佐はあなたと共犯の疑いが……」
メイヤー提督の言葉の途中で、レオンハルト様が大きく舌打ちをした。