元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「……真面目すぎるんだよ、お前は」
レオンハルト様はくしゃりと顔を歪めて笑うと、私の頭をくしゃくしゃとなでた。
「冗談だよ。そんなこと気にしてたら軍人なんてできやしないさ」
「はい……」
「このまま死ぬつもりは毛頭ないけど、今の時点で打てる手はない。相手の出方次第だ」
強気な発言をするレオンハルト様は、いつものレオンハルト様だった。
隠さなくてもいいのに。自らが葬った敵に対する罪悪感も、夜に襲ってくる悪夢も。私は全部受け止める覚悟でいるのに。私が頼りないから、素直になってくれないのかな。
うつむいてしまうと、肩を叩かれた。顔を上げると、レオンハルト様が微笑んでいた。
「というわけで暇だから、二人きりの時間を満喫しようか」
「え?」
やけに顔を近づけてくるなと思ったら、そのままキスをされた。肩にあった手が胸元に降りてきて、恥ずかしさよりも驚きが先に立つ。
「な、なにするんですかこんなところで」
「何って……監獄プレイ?」
「嫌です!」
意味がわからないし! すぐそこに見張りの兵士がいるし!
大声で拒否すると、自分の声が地下空間で反響し、通路の奥からこだまになって帰ってきた。