元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
レオンハルト様は『貴族出身でもない自分が帝位につくなど、畏れ多い』と辞退しようとした。
もともと軍から退役して静かな生活を送ることを望んでいたのだし、これ以上門閥貴族との争いに巻き込まれるのはごめんだとも思っていたらしい。
けれど、新皇帝は結局、レオンハルト様を次期皇帝にすることを勝手に決めてしまった。彼自身、門閥貴族がはびこる帝国のありかたにうんざりしていたという。
『そなたが全て、自分の良いように変えてしまえばいい。余は歴史家として、新しい時代の訪れを遠くから観察させてもらうとしよう』
新皇帝には皇帝殺害の大罪を犯したクリストフを死罪ではなく流刑にしてもらったり、エカベト国王の待遇を厚くしてもらったり、なにかと便宜を図ってもらった借りもある。
そういうわけで、あっさり権力を放棄した新皇帝に任命されてしまった次期皇帝レオンハルト様は、皇帝陛下の命令に逆らうこともできず、狂喜乱舞する市民を裏切ることもできず、しぶしぶ帝位につくことを了承したのだった。
ちなみに私は、そのときはまだ軍服姿でレオンハルト様の身の回りのお世話をしていた。周りがバタバタしていて、正式な辞令が下りないままだったから。