元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

ゆっくりと私の前に立ったレオンハルト様が、私の髪を束ねていたひもを解いた。亜麻色の髪が肩にさらりと広がった。

『お前は皇妃になるんだよ、ルカ』

皇妃。その言葉を頭の中で反芻する。皇妃といえば皇帝の妻。レオンハルト様の、妻に……。

とくんとくんと胸が躍り始める。

『まさか忘れてはいないよな、俺との約束を』

『当たり前です。でも、バタバタしてたから……』

レオンハルト様の花嫁になることは、最初に純潔を奪われたときからずっと考えてきた。けれど国に帰ってきてから父上の反対に合い、かと思ったら今度はレオンハルト様が皇帝に。

彼の補佐役として準備に邁進し、事務処理に追われていて自分のことはすっかり後回しになっていた。

『まったく考えなかったわけではないですけど……皇妃という言葉にピンときません。私がそんな大層な存在になるなんて』

『嫌なのか?』

問われて、ぶるぶると首を横に振る。

『あなたの花嫁になれることは嬉しいです。ただ、皇妃という立場になると、私でいいのかなって……』

男として生きてきたからか、私には優雅さが足りないような気がする。歌もダンスも苦手だし、ピアノなんて全く弾けやしない。

料理もできないし、化粧の仕方も知らない。その代わりに学んできたのは射撃や戦術だったんだもの。

< 203 / 210 >

この作品をシェア

pagetop