元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

そして二カ月後。慌ただしい毎日を乗り越え、この日を迎えた。

私たちが結婚式場に選んだのは堅苦しい宮殿ではなく、仲間と共に過ごした船の上。

独特のにおいがする潮風がドレスの裾を揺らす。

司祭の簡単な祈りの言葉の後、指輪を交換し、軽いキスをかわす。すると参列していたヴェルナー艦隊のクルーだった兵士たちから歓声と拍手が沸き起こった。

兵士たちに守られるように立っているのは、レオンハルト様のお母様。

短い髪で丸顔の優しそうなお母様は、質素な衣装でニコニコと笑っている。

『レオンハルトをよろしくお願いします。あなたのような聡明な娘さんがお嫁さんになってくれるなんて、嬉しい限りです』

と、数日前に挨拶をしてくれた。私は感動して、また泣きそうになってしまった。

私を男として育てた父上も、皇帝となったレオンハルト様の求婚を断ることはなかった。

やはり息子を失うということは少し寂しさがあったみたいだけど、姉上たちが説得してくれたみたい。クローゼ家は甥の誰かが継ぐことになるだろう。

式を終えて市民たちから見える船べりに移動するときに見えた父上は、目に涙を浮かべていた。その横で母と姉たちが笑顔でカゴに入った花びらを投げてくれる。

ライナーさんは相変わらず大好きなお酒を浴びるように飲み、レオンハルト様にからもうとして部下たちに止められていた。

アドルフさんもベルツ参謀も笑顔で拍手してくれている。

彼らと同じ軍服を着て、この船の中で生活していたことがまるで夢みたいに思える。

軍服を脱ぎ捨てて皇妃となった私は、もう彼らと船に乗って戦場に出ることはない。そう思うと寂しさがこみ上げた。

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