元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「やっと本当のお前に戻ったな。これからは女性として、たっぷり愛してやる」

息がかかった胸の端が震える。そんな私の唇に、即位したばかりの皇帝がキスをした。

軍服を着ていた頃は、胸のふくらみも腰のくびれも要らないと思っていた。ひと月毎に来る生理現象も、忌々しいものにしか思えなかった。

自分の本当の気持ちを偽り、父上に強制されたレールを歩んできたのは、反抗する気力もなかったから。

私の人生はずっと偽りで塗り固められていくんだという諦めが、いつも胸の中に巣くっていたから。

そんな私を、ありのままで受け入れてくれたレオンハルト様。

戦争が嫌いなはずなのに数々の武勲を誇り、不敗の軍神と崇められる、矛盾に満ちた彼。

そんな彼と一緒にいるうち、私は再び恋に落ちた。初対面のときから、一年以上もかけて。

「レオンハルト様……」

私は、待っていたの。ずっと、ずっと。あなたが、本当の私を迎えに来てくれるのを……。

「あなたを愛しています」

告白する声が掠れた。レオンハルト様はアンバーの瞳を細めて微笑むと、無数のキスの雨を降らせる。

「やっとお前から言ってくれたな」

私は激しい海の波に翻弄されるように、レオンハルト様の熱に溺れた。


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