元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

──レオンハルト艦隊の一員になって、三日目。

「こらーっ! そんなにお酒を飲んで!」

私は多くの下士官たちと一緒にお酒を飲んでいるライナーさんを見つけて叱りつけていた。夕食の時間なので少したしなむくらいなら何も言わないけど、明らかに食堂が大宴会場と化してしまっている。

「なんだよルカいいじゃないか。敵軍との衝突まで、あと二日はあるんだろ?」

「およその計算です。敵が速度を速めていないとは限りません。そして、そのペースで飲み食いしたら、帰りの分がなくなります!」

まだ敵と遭遇していない今の状況での私の仕事は、様々な事務処理だった。

食料や燃料の消費量の計算をし、兵士どうしのトラブルがないか確認するため、艦内を歩きまわる。

病人やけが人に使う医薬品の数があっているか、毎日チェックする。

何よりレオンハルト様の身の回りの世話が大きな仕事。服はいつも清潔なものを着てもらわなければならないし、寝癖がついていたら直してあげないといけない。

敵と会うまでは暇だと言うのでコーヒーを淹れ、チェスの相手をする。いつも負けるので、楽しくない。

……まあこんな感じで、地味ながらやることが多いのが副官と言う立場だということを痛感する日々だった。

「なくなったら敵艦を奪取して、物資を奪えばいいだろ」

私の説教に対し、平然とそんなことをいうライナーさん。
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