元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「何言ってるんですか」
敵に勝つために補給線を断つ。そのために補給部隊の船を攻撃し、物資を奪うのはアリかもしれないけど、決着がついたあとに略奪しちゃダメでしょ。
「俺の優秀な副官の言う通りにしないか、ライナー」
突然背後で低い声がした。兵士たちが顔色を変えて敬礼すると、酒盛りしていたテーブルを超高速で片付け始める。
振り返ると、やはりそこにはレオンハルト様がいた。
「いいか、毎回戦闘の度に言っているが、敵に勝つまでがヴェルナー艦隊の目的だ。その後の略奪行為は許さないからな」
「敵艦に女が乗っていても仲良くしちゃいけないのか?」
ライナーさんが切なげにレオンハルト様を見上げる。
兵士の心を慰めるため、また炊事洗濯のために女性を乗せる国もあるが、うちの艦隊には女性はゼロ。レオンハルト様によると、女性を巡って兵士同士のトラブルに発展することがあるからだそう。
「却下だ。何度言わせる」
レオンハルト様はばっさりと言い捨てた。
「あーあ、しらけちまった。ルカ、元帥閣下は男色の人かもしれないぞ。気をつけろよー」
欲望むき出しのライナーさんにすれば、お酒にも女性にも目もくれないレオンハルト様は変人に見えているらしい。
それにしても男色って。姉上を花嫁に所望するくらいだから、そんなことはないはずだけど、彼が美少年士官を口説く絵を思い浮かべると、不覚にも胸がドキドキした。