元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「行くぞ、ルカ。お前に頼みたいことがある」

「え? あ、はい」

ライナーさんはじめ、ほとんどの兵士が片づけをしてそれぞれの船室に撤退したあとでレオンハルト様に肩を叩かれる。

食堂に背を向け彼についていこうとした瞬間、ふと一人の兵士に視線が留まった。

顔色が良くない。青白く痩せた兵士は、焦点が合わないような目をしている。制服の階級章から見るに、下士官のようだけど、はて、何と言う名前だったかな。

「おい、何をボーっとしてる」

「はいっ、今行きます!」

いけないいけない、レオンハルト様の命令が一番だものね。彼はきっと、船酔いでもしてしまったんだろう。そう決めつけ、食堂をあとにした。


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