元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「さて、そろそろだな」
起床から五時間後。各艦に作戦が伝達された。
船尾にあるレオンハルト様の船室から出るとすぐ、大きく重そうな操舵輪がある。そこでは既にアドルフさんが舵を握っていた。
船を半分に縦断する線上に建てられた太い三本のマスト。巨人が胸を張るように、それぞれの白い帆が追い風を受けて膨らんでいる。
「いい風だ」
もうすぐ正午になろうという空は、ところどころに灰色の雲を浮かばせている。私の帽子を吹き飛ばしてしまいそうな強い風が、レオンハルト様の軍服の裾を揺らした。
レオンハルト様が船尾から船首へ向かって歩き出す。私はその後ろをついていく。その途中で、大砲の傍で控えている兵士たちが彼に敬礼した。
船首には船の側面に並んでいるよりも一回り大きな大砲が三門並んでいる。その主砲を任されているのはライナーさんだ。
「よう提督、そろそろかな」
「ああ。攻撃は頼んだ」
短い挨拶をすると、大砲の真横にある階段を上り、甲板全体が見渡せる船首楼の上へ。
そこから背後を見ると、ヴェルナー艦隊の他の船が整然と支持された通りの隊列を組んで航行しているのが見えた。
この船は旗艦でありながら、本当に最前線にいる。それを実感し、ごくわずかだけど全身が震えた。
「……おいでなさったぞ。敵軍だ」