元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「お前が承諾してくれないなら、無理にでも花嫁にするまでだ」
無理にって、どうやって……。
キスによる酸欠でぼんやりする頭をレオンハルト様の胸に預けていると、不意に背中に妙な感覚が走った。
「ちょっと!」
レオンハルト様の手が、さらしをほどこうとしている。無理にって、そういうこと!?
「傷が開くぞ。暴れるな」
これが暴れずにいられるか。なんとか彼の腕から逃れようとするけど、傷の痛みが邪魔をした。うっかり左腕に重心を乗せてしまい、声を殺して悶える。
「ほら。な」
『ほら』じゃないでしょ。そう抗弁する間もなくレオンハルト様がベッドに乗り、動けない私を難なく横にした。
右手をつかまれれば、もう私に抵抗する術はない。
「ひどい。卑怯です、レオンハルト様」
「艦隊の仲間全員を欺いていたお前が言うセリフか」
今の私に一番効く辛辣な言葉に閉口すると、彼はさらに蓋をするように口づける。
さらしが巻き取られ、素肌にレオンハルト様の手のひらが触れた。びくりと跳ねる背中をどうすることもできない。
「素直になれ、俺の花嫁」
熱い舌を絡ませる深いキスのあとで、彼は私の耳朶に唇を寄せ、そう囁いた。