元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
抵抗する術がないだなんて、嘘だ。本気で逃れたいなら足がある。彼を蹴飛ばせばいいのに、そうできないのは……。
耳から首筋、鎖骨へと彼の唇が私の肌にキスをふらせながら降りていく。
「レオンハルト様……」
一年前。私は、あなたに恋をした。
そして今、深い海の底に沈んでいくように、あなたの愛に溺れてしまう。
「お前に女としての歓びを教えてやる」
レオンハルト様はその言葉通り、私の全身に未知の感覚を呼び起こした。けれどそれよりも自分の気持ちに起きる革命の方に驚いていた。
私、女性としてレオンハルト様を愛しはじめている……。
愛する人のたくましい腕に抱かれる。それは今まで無理やり押しつぶしてきた私の胸を膨らませるにふさわしい幸福感をもたらした。
これからのことは考えられない。ただ今は、レオンハルト様に愛されている自分を感じたい。
父上のことや戦争のことを頭から追い出すのに、それほど努力は必要なかった。それらが占めていた箇所はすぐにレオンハルト様でいっぱいになってしまったから。
揺蕩うシーツの上で彼の愛に溺れ、私はまた意識を失ってしまった。