鬼の生き様
双方入り乱れての乱闘が始まり、力士たちは自慢の腕力で八角棒を振り回す。
「いいな、殺すな」
永倉の言葉に総司は頷いた。
ぐるんぐるんと振り回す八角棒。
その攻撃に、総司は腕を打たれ、平山は頭を打たれて血をにじませた。
しかし、所詮は棒と剣である。
ましてや相手は凄腕の遣い手がそろった壬生浪士組である。
本気になれば力士などは敵ではなかった。
芹沢が脇差を相手の横腹にぐいっとえぐると、大男の力士もたまらず倒れて息絶える。
斎藤は腹痛なんてそっちのけで逃げようとした力士を追いかけ、その背中を一刀両断して即死させる。
永倉は、もっとも屈強と見える力士に、八角棒で腕を打たれて脇差を弾き飛ばされてしまったが、次の一撃を受ける前に拾い上げ、敵の肩先深く斬り付けた。血煙をあげて倒れた力士は、やがてその場に絶命する。
島田魁は力士のような強靭な肉体で、力士を投げ飛ばした。
結局力士たちは総崩れとなり、三人の死者と、十四人もの負傷者を出して逃げることになった。
芹沢は「追うな、追うな」と同志たちを制し、一同はようやく住吉楼へ戻ったのだった。