鬼の生き様
新見は行き場のない無念さが自分を押し包んできていた。
「何故、清河なんだ。
なんでアンタじゃねえんだ。
芹沢さん、俺達が望んだ事を成し遂げようとするのが、なんで芹沢鴨じゃねえんだ!」
胸をかきむしりたいほど悔しく、暗黒で鋭い不平を感じ、それは胸を突き上げてくる気持ちで闇雲に涙が溢れてきた。
「清河は結局、佐々木只三郎に殺された。
器じゃなかったんだ。
あんたじゃなきゃ出来なかったんだ!
尊皇攘夷!!
俺達、由緒正しき水戸の人間が叩き込まれたこの願い!
それを成し遂げるのは長州や土佐の無粋な人間じゃねえ。
芹沢鴨、あんたしか出来ねえんだ!!」
「……新見」
「俺は、この精忠浪士組に賭けたんだ。
誰もが、未だに成し得ていない攘夷を、俺達、精忠浪士組が成し遂げるのさ。
そん時ゃアンタがただ一人、総帥としてドーンと構えててくれなきゃ、駄目なのよ。
その為には……」
「近藤と土方を斬る…のか」
芹沢は困惑した表情を浮かべた。
決意が宿っているような目で新見は頷いた。
「そうだ、奴等は所詮は百姓だ。
武士道なんちゃ持ち合わせてはいない侍ごっこをしている連中にすぎん。
奴等に俺達の崇高な志など理解出来るはずがない」
芹沢には歳三や勇を斬る気など毛頭ない。
筆頭局長は芹沢だ。
それだけで十分であったが、新見の不撓不屈(ふとうふくつ)の志というのは強かった。
(似ているな。
新見は土方で、ワシは近藤……か)