鬼の生き様
平山の亡骸の真隣に立てかけられている屏風の向こう側には、芹沢とお梅が寝ている。
抱き寄せながら眠る二人の寝顔を歳三はしばらく見ていた。
幸せそうに微笑み合いながら寝ているのを確認すると様々な出来事が走馬灯のように駆け巡った。
『土方、新見を武士として死なせてくれてありがとう。
これからは新見の分まで頼むぞ』
歳三は唇を噛み締めた。
「さよならだ。芹沢さん」
屏風を芹沢とお梅に被せるように倒すと、歳三と総司は屏風の上から何度も滅多刺しにした。
(…終わった)
そう思った瞬間、屏風は勢いよく弾き飛ばされて、二人は後ずさった。
血みどろになった芹沢は、刀掛けに急いで手をかけ、鞘を払い宙を切った。
「賊めがッ!
ワシを…会津ちゅ…じょう、御預…壬生浪士組、筆頭局ちょ…芹沢鴨だと知っての、狼藉かぁ!」
薄暗い部屋の中、雷の光線が部屋を明るくした。
轟く雷の音、照らされる刺客の顔。
「……え?」
芹沢は二人の顔を見て目を見開いた。
「土方……沖田ァ…?」
歳三は真っ直ぐ芹沢を見据えていた。
芹沢は我に帰りハッと背後を振り返った。
「お梅!」
絶命していると思しき最愛のお梅、そして昔からの同志、平山の首と胴が離れた亡骸を見てわなわなと芹沢は震えた。
その隙を見て歳三は斬り込んだが、鴨居に刀があたり芹沢を斬る事は出来なかった。
芹沢は刀を振り、歳三は飛びのき脇差を抜いた。
「何故じゃい!土方ァ!!」
燃え上がるような憤りが頭の中で渦を巻き、こめかみに青筋が浮き出て、身体はぶるぶると震え芹沢は歳三を睨みつけた。
「死んでくれ、芹沢さん」
それだけだ、と何を考えているのかさっぱりわからないような無表情な顔つきで言った。
「ワシはお前達とは分かり合えたと思っていた…。
あの宴もすべて偽りだったと言うのか!」
これほど人に裏切られて、悔しい想いをした事はかつてあっただろうか。