無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「誰のせいだと……」

 からかうように見下ろされて私が口を尖らせると、彼はますます楽しそうに顔をほころばせた。

 素顔の冴島さんは、とろけるように甘くて、少しいじわるだ。


 静まり返ったエントランスにふたりぶんの足音を響かせながら出入口に向かう。

 ガラスの向こうはすっかり暗く、景観重視で設置された間接照明がぼんやりあたりを照らしているのが見える。

 自動ドアをくぐる直前、ふいに頭を引き寄せられたと思ったら、こめかみにキスをされた。

 驚いて見上げたけれど、冴島さんは歩きながら知らん顔で私の腰に手を回す。

「ダメですってば、もう」

 誰も乗っていないエレベーターならまだしも、こんな開け放たれた空間での行為は危険だ。

 どこに人の目があるかわからないのに。

「もし誰かに見られたら」

 言いかけたときだった。

「和花!?」

 聞き覚えのある声にびくりと肩が跳ねる。
 
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