無慈悲な部長に甘く求愛されてます
広いエントランスアプローチには等間隔に植木が並んでいる。
足元の間接照明だけが光る薄暗い空間に、人影を見つけて、私は凍りついた。
丁寧に巻かれた品のいいダークブラウンの髪と、目鼻立ちのきりりとした美しい顔。
「真凛……」
見られた。
私の腰に回されていた手がするりと離れる。でも、もう遅い。
見開かれた目をまともに見れなくて、私はうつむいた。
油断した。フロアにいた同僚たちはとっくに姿を消していたから、真凛もとうに帰宅していると思っていた。
頭の中でエレベータを降りたあとの動きをさかのぼる。
真凛はいつ私たちに気づいたのだろう。
こめかみにじんわりと残る余韻に、ぎゅっと目をつぶった。
見られている。きっとすべて。
ガラス越しに、私の頭に唇を寄せた冴島さんを、彼女は見たにちがいない。
「……これは、その」
言わなきゃ、と思った。
むしろこれはチャンスかもしれない。
そう思うのに、突然すぎてうまく言葉が出てこない。