無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「弁当屋のおばちゃんも、ほかの会社の女の子も、目がハートになっててさ。そりゃあれだけのイケメンが愛想よく笑ったら、一発KOだよなぁ」

 打ち込んでいた文字をミスタイプしてしまった。

 デリートを押しながら、私は思わずつぶやく。

「ほかの会社の女の子……?」

 私が反応したことに気をよくしたみたいに、松田先輩は嬉々として言った。

「そうそう、実は他社に冴島部長のファンクラブもあるらしいよ。昼時とか、共同社食に行くとめちゃくちゃ話しかけられてるし」

 頭を殴りつけられたような気がした。

「まじかよ!」
「うそだろ!」

 松田先輩のせいで、営業部門はますます騒然となる。

 私はデリートを押しすぎて、消さなくてもいい文章を二行分消してしまった。

 ショートカットキーを使ってあわてて復元する。

 心臓が不穏な音を立てていた。

 ファンクラブ……?

 聞きなれない単語が、頭の中をぐるぐる回って、離れなかった。


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