無慈悲な部長に甘く求愛されてます
♡
今日は午後イチで経営会議が開かれる。それはつまり、営業部の島が騒がしくなることと同義だった。
管理職のいないフロアで、池崎さんがいつも以上にヒートアップしている。
「ほんとだって!笑ったんだよ、あの鬼部長が!」
「池崎先輩、夢でも見たんじゃないですかあ?」
「あれが夢であってたまるかよ。もう満面の笑みでさ!こわかったよ」
「へえ、鬼の目にも涙じゃなくて笑みですか」
「今度俺にも笑いかけてくれないかなー」
「やめとけ!死ぬほどこわいぞ!」
彼らのやりとりを聞きながら、私は小さく笑ってしまう。
なんだかちょっと違う気もするけれど、少しずつ、こうやって鬼上司のイメージが変わっていくといいな、と思っていると、
「冴島部長が笑ってるの、見たことあるよ」
突然口を挟んだのは、私の正面に座る松田先輩だった。
「宅配弁当のおばちゃんと世間話しながら、普通に笑ってたし」
「松田!本当か!」
「冴島部長だって人間なんだから、普通に笑うでしょ」
鷹揚に笑いながら、松田先輩は思いがけないことを言う。