無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「それなら、俺が選んで君にプレゼントすることにしよう」

「え!」

 ずかずかと店舗に入っていく背中に、唖然としてしまう。

「ま、待ってください部長」

 追いすがると、彼は急に振り返って私を見下ろした。

「外で部長はやめてくれ」

「え、あ……はい」

 勢いに飲まれて、私は立ち尽くした。そのすきに、冴島部長は次々に私に洋服をあてがっていく。

「ふむ、なるほど」

 着せ替えマネキンのように呆然と突っ立っている私に、冴島さんはハンガーを押し付けた。

「これとこれ、試着してこい」

「え」

「ほら、早く」

「待ってください部長……あ」

 私を見下ろす整った顔に、威圧的な気配が重なっていく。

「さ……冴島さん」

 言い直すと、彼はにこりと笑ってエスコートするように私の背中を押した。

「ひとりで着れないっていうんなら、俺が手伝ってやる」

「き、着ます!着れます!」

 服を抱えて、私は大慌てで試着室に駆け込んだ。

< 62 / 180 >

この作品をシェア

pagetop