無慈悲な部長に甘く求愛されてます

　冴島さんが選んだのは、ウエストから下がふわっと広がるフレアのニットワンピースだった。

　グレイッシュなピンク色で甘すぎず、ほどよいドレープが優雅さを演出してる。くやしいけど、かわいい。

「いいじゃないか」

　試着室から出ると、まっさきに冴島さんが言った。そのとなりで女性店員が顔を輝かせる。

「本当によくお似合いです。今日のネックレスとイヤリングにもぴったりですね」

「で、でも、上半身が結構ぴったり目で、線が出てしまうというか」

　認めるのが悔しくてもにょもにょ呟いていると、冴島さんは顎に手をあてながら満足そうに頷いた。

「色も君にぴったりだな。かわいいよ。俺は好きだ」

　思わず店員さんと目を合わせてしまった。

　赤いモヘアタッチのベレー帽をかぶった彼女は、帽子と同じような色に頬を染めてうんうん頷いている。

　私の顔も、同じ色に染まっているにちがいなかった。

　本当に、今日の冴島さんはいったいなんなのだろう。