無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「それじゃ、これ一式ください」
ワンピースに合うコートと靴まで指差して、彼は黒色のクレジットカードをベレー帽の店員に渡した。
ぎょっとする。
いくらなんでも買ってもらいすぎだ。
「あの、冴島さん、私も」
払いますから、と言う前に、ぐるるると盛大にお腹が鳴った。
試着室のカーテンを掴んだまま静止する私を見下ろして、冴島さんは眉間に皺を寄せる。
「……昼、食べてきてないのか?」
「……えと、あの、ちょっと支度に、手間取っちゃって」
目を逸らしながら答えると、冴島さんのため息が聞こえた。
もしかして、ものすごくがっかりさせてしまったのでは……。
もっとも、私がなにかを期待されていたとも思わないけれど。
しゅんとしていると、手を取られて試着室から引っ張り出された。
買ってくれたばかりのヒールを足元に差し出され、履くように促される。
「そういうことは、早く言いなさい」
「え、あの」
私の荷物を拾い上げると、冴島さんは私の手をつかんだまま店内を横切る。