無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「あ、お客様。お包みは」
会計を済ませて戻ってきた店員さんからカードを受け取り、サインをして、冴島さんは言った。
「このまま着ていきます」
ベレー帽の店員さんがタグを切ってくれているあいだに、もうひとりの店員さんが紙袋に私が着ていた洋服を入れて渡してくれた。
「ありがとうございました」と頭を下げる彼女たちに見送られながら、私は引きずられるようにして広い背中を追う。
「あの、どこに行くんですか?」
「いいから、黙ってついてこい」
強い口調と、私の手を掴む力の強さに、心臓がますます激しく打ってやまなかった。
本当に、目が回りそうだ。
見上げるばかりだった高い建物の、地上からは絶対に見ることができなかった屋上が、眼下にある。
地上150メートル、42階のレストランから見ると、自分が住む都市は長方形のビルが寄せ集まってできているのだなと改めて感じた。