生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する

67.生贄姫は魔術師として依頼を受ける。

「リリ、遠隔で効率的に団員に夢魔対策の魔法をかけて維持するための魔術式描ける?」

「遠隔限定ですか?」

「そ。それなら、被害者の解呪に専念できる。生け捕りの役割ごと第二騎士団に丸投げ。亜種連れてきたらうちで情報解析する」

「はぁ? 丸投げって、うちも討伐専門ですけど!? 生け捕りって」

「クロとわんこ、できる子。ふぁいとー」

 ぐっと親指を立て、フィオナは役割を押し付ける気満々だ。
 リーリエは唇に指を当て、真剣に熟考する。

「遠隔範囲は?」

「王都全域」

「持続時間は?」

「討伐時及び輸送も含めた時間+二時間が理想」

「付与予定の効果は?」

「幻聴・幻視ブロックおよび眠気防止」

「付与対象人数は?」

「100が理想」

 つまり必要とされているのは合同演習参加予定者全員への長時間ダメージブロック魔法付与を実現するための魔術式。
 即決できないリーリエにフィーは冷静に告げる。

「完成までの期間は演習日までの2週間。無理を言っているのは分かっている。できないなら断って」

「……やります。ただし、事前実験する時間をください」

「実験、するなら1週間しか猶予ない……よ?」

「構いません。安全性の担保できない魔術式を出すわけにはいきませんから」

 人の命が絡む以上そこはどうしても譲れない。リーリエは提示された条件を飲んだ。

「じゃあ決まり。1週間後のこの時間、闘技場で。できたら、異界の書庫開放する」

 フィオナは指を振って空に契約書を書き出し、魔法紙に定着させる。
 先程フィオナが提示した達成条件の書かれたそれに、フィオナはサインを記す。

「正式依頼。取引成立」

 リーリエは了承し、自身の名前を記載した。
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